なぜ空き家の管理が必要なのか
親から相続した実家、転勤で不在にしている持ち家、将来的な活用を考えている不動産──。様々な理由で空き家を所有している方が増えています。しかし、空き家を「そのまま放置」してしまうことは、想像以上に大きなリスクを伴います。
適切な管理を行わないと、建物は急速に劣化し、資産価値が大幅に低下するだけでなく、近隣住民とのトラブル、行政からの指導、さらには損害賠償責任を負う可能性まで生じます。ここでは、空き家を放置することで発生する具体的なリスクと、定期的な管理がなぜ必要なのかを詳しくご説明いたします。
空き家を放置することで発生するリスク
建物の急速な劣化
人が住んでいない建物は、想像以上に早く劣化します。これは「家は人が住まないと傷む」と昔から言われている通りです。定期的な換気が行われないと、室内に湿気がこもり、カビが発生します。カビは壁紙や木材を侵食し、建物の構造部分にまでダメージを与えます。また、水道を使用しない期間が長くなると、配管内の水が蒸発し、排水トラップの機能が失われます。その結果、下水からの悪臭が室内に充満し、害虫やネズミが侵入する経路となってしまいます。
屋根や外壁も、定期的な点検がなければ、小さなひび割れや破損を見逃してしまいます。雨漏りは初期段階では目立ちませんが、放置すると建物の内部構造を腐食させ、大規模な修繕が必要になります。シロアリの被害も、早期発見できなければ建物の基礎部分まで侵食され、建物の安全性そのものが脅かされます。
このように、空き家の劣化は放置期間に比例して加速度的に進行します。数年間放置しただけで、本来であれば数十年使用できたはずの建物が、居住不可能な状態になってしまうケースも珍しくありません。
資産価値の大幅な低下
建物が劣化すれば、当然ながら不動産としての資産価値は大幅に低下します。将来的に売却や賃貸を考えている場合、管理が行き届いていない建物は、購入希望者や入居希望者から敬遠されます。また、修繕が必要な箇所が多ければ多いほど、売却価格は下がり、場合によっては建物の価値がゼロと評価され、解体費用を差し引いた価格でしか売却できないこともあります。
適切な管理を行っていれば維持できたはずの資産価値を、管理を怠ったことで失ってしまうのは、非常にもったいないことです。定期的な管理にかかる費用は、将来的な資産価値の維持という観点から見れば、十分に価値のある投資と言えます。
近隣住民とのトラブル
空き家が原因で近隣住民とトラブルになるケースは少なくありません。雑草が伸び放題になり、隣地に越境したり、害虫の発生源となったりすれば、近隣住民から苦情が寄せられます。庭木が成長しすぎて隣家の日照を妨げたり、落ち葉が隣地に大量に落ちたりすることも、トラブルの原因となります。
また、管理されていない空き家は、不法投棄の対象になりやすい傾向があります。敷地内にゴミが捨てられ、悪臭や害虫が発生すれば、近隣住民の生活環境を悪化させます。さらに、外壁の一部が剥がれ落ちたり、屋根瓦が飛散したりすれば、通行人や隣家に被害を与える可能性もあります。
こうしたトラブルは、所有者が遠方に住んでいる場合、すぐには気づけません。近隣住民からの苦情が自治体に寄せられ、行政から連絡が来て初めて問題を知るというケースも多く見られます。近隣との良好な関係を維持するためにも、定期的な管理は欠かせません。
不法侵入・犯罪のリスク
管理されていない空き家は、不法侵入や犯罪の対象になりやすいという問題があります。郵便受けにチラシや郵便物が溜まっている、雑草が伸び放題、窓が割れたまま放置されているなど、明らかに管理されていない様子が外部から分かる空き家は、空き巣や不法侵入者にとって格好の標的となります。
空き巣に入られれば、金品を盗まれるだけでなく、建物内を荒らされたり、破壊されたりする被害も発生します。また、ホームレスや若者のたまり場として不法占拠されるケースもあります。さらに深刻なのは、放火の危険性です。管理されていない空き家は、放火犯にとって発見されにくい場所であり、実際に空き家を狙った放火事件は全国で発生しています。
火災が発生すれば、建物が全焼するだけでなく、近隣の住宅にも延焼し、大きな被害をもたらす可能性があります。こうした犯罪のリスクを減らすためにも、定期的に巡回し、管理されている様子を外部に示すことが重要です。
特定空家指定と行政指導
平成27年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」が施行され、管理が不十分な空き家に対して、自治体が積極的に関与できるようになりました。この法律により、以下のような状態にある空き家は「特定空家」に指定される可能性があります。
- 倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空家に指定されると、自治体から改善の助言・指導が行われます。それでも改善されない場合は勧告が出され、さらに従わなければ命令が出されます。命令に違反した場合、50万円以下の過料が科されることもあります。また、勧告を受けた時点で、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がります。
さらに、命令にも従わない場合、自治体が強制的に建物を解体し、その費用を所有者に請求する「行政代執行」が行われることもあります。解体費用は所有者の負担となり、数百万円単位の請求が来ることもあります。
このように、空き家を放置することは、行政からの指導や罰則、さらには経済的な負担増加に直結します。特定空家に指定される前に、適切な管理を行うことが重要です。
損害賠償責任のリスク
空き家の管理を怠ったことで第三者に損害を与えた場合、所有者は民法第717条「工作物責任」に基づき、損害賠償責任を負う可能性があります。例えば、管理不足により外壁が剥がれ落ちて通行人に怪我を負わせた場合、屋根瓦が飛散して隣家の車を傷つけた場合、倒壊した塀が道路を塞いで事故を引き起こした場合などが該当します。
工作物責任は、所有者の過失の有無に関わらず責任を問われる「無過失責任」に近い性質を持っています。つまり、「管理していなかったことを知らなかった」という言い訳は通用しません。所有者として適切な管理を行う義務があり、それを怠った結果として損害が発生すれば、賠償責任を負うことになります。
損害賠償額は、被害の程度によって数百万円から数千万円に及ぶこともあります。定期的な管理を行い、建物の状態を把握し、必要な修繕を行うことは、こうした法的リスクを回避するためにも不可欠です。
定期的な管理がもたらすメリット
建物の劣化を最小限に抑える
定期的な換気、通水、清掃、点検を行うことで、建物の劣化速度を大幅に抑えることができます。湿気を逃がし、カビの発生を防ぎ、配管のトラブルを予防することで、建物は長期間にわたって良好な状態を保ちます。小さな異常を早期に発見できれば、大規模な修繕が必要になる前に対処でき、結果的に修繕費用の節約にも繋がります。
資産価値を維持できる
適切に管理された建物は、将来的に売却や賃貸を考えた際にも有利です。購入希望者や入居希望者に対して、「きちんと管理されていた物件」という安心感を与えることができ、より高い価格での取引が期待できます。また、管理の記録や報告書があることで、物件の状態を客観的に証明でき、信頼性が高まります。
近隣住民との良好な関係を保てる
定期的に巡回し、清掃や除草を行うことで、近隣住民に対して「この空き家は管理されている」というメッセージを発信できます。これにより、苦情やトラブルを未然に防ぎ、良好な近隣関係を維持できます。将来的にその地域に戻る可能性がある場合や、地域とのつながりを大切にしたい場合には、特に重要なポイントです。
犯罪リスクを低減できる
定期的な巡回により、不法侵入や不審者の痕跡を早期に発見できます。また、郵便受けを整理し、清掃を行うことで、外部から見ても「管理されている家」という印象を与え、犯罪の標的になりにくくなります。管理会社のステッカーを貼ることで、さらに抑止効果が高まります。
特定空家指定を回避できる
定期的な管理を行い、建物を適切な状態に保つことで、特定空家に指定されるリスクを回避できます。行政からの指導や罰則、固定資産税の増加といった問題を防ぎ、所有者としての責任を果たすことができます。
法的リスクを回避できる
定期的な点検により、建物の危険箇所を早期に発見し、必要な修繕を行うことで、第三者に損害を与えるリスクを最小限に抑えられます。損害賠償責任を負う事態を未然に防ぎ、法的トラブルから身を守ることができます。
精神的な安心感を得られる
遠方に住んでいると、空き家の状態が気になっても、なかなか確認に行けないというストレスがあります。専門業者に管理を委託し、定期的に報告を受けることで、「きちんと管理されている」という安心感を得られます。写真付きの報告書で状態を確認できるため、いつでも物件の様子を把握でき、精神的な負担が大幅に軽減されます。
空き家管理は「コスト」ではなく「投資」
空き家の管理には費用がかかります。しかし、それは単なる「コスト」ではなく、不動産という大切な資産を守るための「投資」と考えるべきです。
管理を怠った結果、建物が大きく劣化し、数百万円単位の大規模修繕が必要になったり、資産価値が大幅に下がって売却価格が低くなったり、近隣トラブルや損害賠償で予期せぬ出費が発生したりすれば、結果的に管理費用よりもはるかに大きな損失を被ることになります。
月々数千円の管理費用で、数百万円、数千万円という資産を守り、将来的な選択肢を広げることができるのであれば、それは十分に価値のある投資と言えるでしょう。
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